家を売ったら税金増えた! 少額の利益でも負担増の罠

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  • 持ち家を売った利益が3000万以内なら所得税はかからない
  • しかし、その利益は合計所得金額に加算されるため、配偶者控除や保育料などに影響する可能性がある
  • 家の購入から売却までの間にかかった費用はもれなく計上し、申告する所得を減らそう

家を売って得たお金に税金はかかるのだろうか?

10年間実際に住んだ家を売って、買い値より若干高い値段で売れたとする。この場合、税金の心配をする必要はない。それが大方の認識だと思う。
しかし、税金に全く影響がないのかというと、そうではないということに気付いた。結構な額の税金を余計に払ってしまったのだ。しかも、それに気付いたのは翌年ときている。

ややこしい話になるが、この記事で言いたいことは一つ。
家に関係する領収書は、たとえ収入印紙を買った時のレシートであっても、家を売るまで保管すべし!

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【いきなり結論】なぜ、細かい領収書が必要か?

なぜ、ちまちま領収書をかき集めないとダメなのか?
この記事では、その理由を素人なりにキチンと書いているつもりである。

かなりの長文なので、全部読むのは大変だと思う。そこでまず、「なぜ」に対する答えを一言で書こう。
家を売った所得(儲け)は、そのまま合計所得金額に加算されるから」である。

つまり、5000万の家を5500万で売ったら、差額の500万円が「合計所得金額」に加算される
分離課税かつ所得控除があるから、この500万円そのものには税金はかからない。しかし、あなたの年収は例年より500万円高いと認識されてしまうのである。その結果、配偶者控除や保育料など、多方面に影響してくる可能性がある。

マイホームを売ったときの特例で「3000万円控除」

まずは、よく知られている話から。
実際に自分が住んでいた家を売った時の所得には、3000万円の所得控除がある

「収入」ではなく「所得」であることに注意されたい。
要するに「家を売った儲けが3000万円以内なら、その儲けに対して税金はかからない」ということである。

投資目的で買った家ならいざ知らず、自分が住んでいた家を売って、買い値より3000万円も高く売れるというラッキーはそうそう多くない。実際にはほとんどの人がこの控除の範囲内で収まるだろう。

ただ、正確にいうと、所得は「買い値」と「売り値」の差額ではない。
これまでの文中で「買い値」と呼んでいたものは、正しくは「取得費」に「譲渡費用」を加えたものである。さらに「取得費」からは「建物の減価償却分」を差し引かなければならない(後述)。

家を売った所得は分離課税

次に、家を売った所得は分離課税になることを押さえておこう。

家を売った所得は「分離課税」である。つまり家を売った所得「だけ」に税率15%をかけて税額が算出される。給与所得などと合算して税額を計算するのではない。

所得税額=課税所得×15%
(ちなみに住民税額=課税所得×5%)

税率15%と聞くと重税感がある。が、先に述べたとおり、3000万円の特別控除がある。

課税所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

この式の「特別控除」のところに「3000万円」が入ると思えばよい。
譲渡価額と「取得費+譲渡費用」の差額(つまり儲け)が3000万円以内であれば右辺がマイナスとなる。つまり課税所得はマイナス(儲けは出なかったという扱い)。ということは家の売却に関する所得税額はゼロとなる。めでたしめでたし。

家の「取得費」とは? こんなものまでカウントできる

上記の計算式で一番難しいのは「取得費」だ。
単純にいえば「家を買う時にかかったお金」のことだ。が、家の売買契約書の金額を丸写しして済むものではない。

減価償却費を差し引く

まず、建物の価値は築年数によりだんだんと下がっていく。その分は取得費から差し引いて計算しないといけない。いわゆる減価償却だ。

たとえば家の建物部分を2000万円で購入したとする。10年後、古くなったその建物に2000万円の価値はない。そこで、もっと安い金額、たとえば1800万円として取得費を計算せよ、というのである。
固定資産税の計算でも、築年数が経つにつれて建物の評価額が安くなっていく。それと同じようなものだ。

したがって、たとえば5000万円で購入した建売住宅を5000万円で売ったとしても、差し引きゼロとはならない。価値の減少分が200万円であれば「4800万円で買ったものを5000万円で売った」とカウントする。すなわち所得は200万円である。

前述のとおり、実際には3000万円の控除がある。つまり特別控除前の所得が3000万円までなら税金はかからない。だから、儲けが0円だろうが200万円だろうが結果は同じでしょ?
そう思われた方、そうとも限りませんよ、という話が本記事の主題だ。最後まで読んでほしい。

購入時の諸費用も、家の価値を高める設備費も算入できる!

さて、減価償却は納税者から見て不利になる話だったが、ここからは有利になる話。
家を売ったり買ったりすると、司法書士費用やら印紙代やら、諸費用が結構かかる。これらは「取得費用」あるいは「譲渡費用」として計上してよい。自営業でいう「経費で落とせる」に近い感覚だ。

実際どういう費用を計上してよいかというのは以下のページを読んでいただきたい。

結構、広範な費用が経費として認められる。特に購入時の費用については注目に値する。

まず、登録免許税、不動産取得税、印紙税といった税金を差し引くことができる。登記費用もOKとあるので、司法書士に対する報酬も差し引ける

また、概要のところに「設備費や改良費なども含まれます」とあるのに注目したい。建売住宅を購入する際に支払ったオプション工事費(例:床暖房)。さらには購入後に行った外構工事、古くなってきたために実施したリフォームの工事費。こうしたものも取得費として認められる可能性がある。

ただ、何でもかんでもOKというわけではない。認められるか否かの基準がある。その工事費が「物件の価値や機能を向上させる」かどうかという点が大事だ
たとえば、ガス給湯器が古くなってきたので同機能の新機種に更新したという場合。これは改良ではなく修繕とみなされ、取得費として認められない可能性が高い。怪しいと思ったら税務署なり税理士なりに相談するのが良い。

なお、設備に関する出費は土地ではなく建物に付随すると考えられる。だから建物と同様、経過年数に応じて減価償却を行う必要がある。
我が家の場合、家を買った際に諸費用を払ったし、床暖房やLANコンセントなどのオプション費用も結構かかった(トイレの換気扇までオプションだったからな!)。さらに、住み始めてから外構を大幅にいじっており、門柱や門扉を追加した。これらはすべて取得費として認められる可能性が高い。

工事って、何で領収書がないの?

しかし、結構な金額だというのに、金額を証明するものが意外にない。そのことに今さら気付いた。

司法書士費用については、ちゃんとした領収書が見つかった。収入印紙を購入した際のレシートも一部は見つかった。
しかし、百万単位でかかったオプション工事や外構工事について、ちゃんとした証拠が残っていないのである。

思い起こしてみると、契約書を取り交わすような大掛かりな工事では、契約書は手元にあるものの、全額を支払い終わったときに領収書をもらった覚えがない。
契約書にはちゃんと収入印紙が貼ってあるので、これに工事代金を振り込んだ際の通帳のコピーでも添えれば税務上は問題ないのかもしれないが、素人は釈然としない。チロルチョコを買っても領収書が発行されるのに、なぜ数千万円の家を買っても領収書が来ないのか。印紙税の関係だろうか。

実際には契約書もなかった

と、領収書がないことに文句を言ってみたものの、実際にはオプション工事も外構工事も、契約書の本通すら見当たらないという体たらくである。

外構工事に関してはおそらく、私の保管が悪いだけだと思う。しかしオプション工事については怪しい。けっこう高額だったのに、ちゃんとした契約書を取り交わした記憶がない。営業担当者に「これとこれを頼みます」という注文表を渡したことしか覚えていない。

ともかく、書類がないという理由で、オプション工事や外構工事を取得費に計上することができなかった。

レシートを捨てたために大損した話

そんなに細々と費用を計上しなくても、どうせ譲渡所得は3000万円以下だからいいでしょ? それが、家を売った当時の私の考えだった。
なので、領収書が手元にあるものに関しては取得費として計上したが、そこから先、書類を引っかき回すような作業はしなかった。

家を売った翌年の3月、確定申告で譲渡所得に関する申告をした。今のところ何のおとがめもない。
よく、家を売ると税務署から「お尋ね」が来るという話を聞く。しかし、あまりにツッコミどころがないせいか、確定申告後に電話1本、ハガキ1枚すら来ない。

翌々年の確定申告で問題に気付く

そしてさらに翌年、つまり家を売った翌々年3月の確定申告。
株の配当金を分離課税にするか総合課税にするかと悩み、確定申告の計算サイトで申告内容をガチャガチャいじりながら還付金額を確認していたときに、妙なことに気付いた。

昨年の配偶者控除が少ない――!?

我が家で所得があるのは実質的に私一人なので、妻に関しては配偶者控除がある。私の所得は生まれてこの方ずっと900万円以下なので、配偶者控除は38万円(当時)となる。
ところが、昨年の確定申告書をよくよく見直すと、配偶者控除が13万円となっているではないか! これは所得が950万円超1000万円以下の場合の額である。
いやいや、オレそんなに稼いでないから!

しばらく考えて理由が分かった。
昨年は「本来の給与所得」+「家を売った譲渡所得」で配偶者控除が算定されたのである。

「譲渡所得には最大3000万円の所得控除がある」って言ってたじゃないか! つまり課税譲渡所得は0円じゃないか!と反論したくなる。が、そんなところを間違う国税庁ではない。
配偶者控除は「合計所得金額」によって算定され、合計所得金額には特別控除前の所得が加算される、と明記されていた。
以下が、国税庁による「合計所得金額」の説明である。

次の1と2の合計額に、退職所得金額、山林所得金額を加算した金額です。
申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額(長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額)の合計額を加算した金額です。
1 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
2 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額
ただし、「総所得金額等」で掲げた繰越控除を受けている場合は、その適用前の金額をいいます。

国税庁にしては珍しく誤解を招く書き方で、一見すると退職所得と山林所得だけを加算すると読める。しかし実際には、※のところに「申告分離課税の所得がある場合」という、対象の相当広い記述がある。ここで、不動産の売却を含めた申告分離課税の所得すべてが加算される、ということを言っている。

退職所得や山林所得のある納税者は数少ないと思う。しかし、大体どの解説を見てもこのような書き方になっている。おそらく法令の原文がこういう立て付けになっているのだろうと予想したが、やはりそうだった。
以下しばらく、個人的なメモみたいになるので読み飛ばしていただいて結構。

メモ:合計所得金額の定義

「合計所得金額」の定義は所得税法第2条第1項第30号にある。
法の冒頭によくある「用語の定義」であるが、実は「合計所得金額」という用語は第2条の中でしか通用しないローカルな用語である(その後、いくつかの条項で引用され再利用されている)。その定義は以下のとおり。

第七十条(純損失の繰越控除)及び第七十一条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における第二十二条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下この条において「合計所得金額」という。)

確かに、「総合課税の所得」「退職所得」「山林所得」の合計額が合計所得金額であると書いてある。その他の「申告分離課税の所得」は出てこない。

では、その他の「申告分離課税の所得」が合計所得金額にプラスされるというルールはどこにあるかというと、どうも所得の種類ごとに個別に規定されているようだ。
今回のような「実際に住んでいた家の売却による所得」であれば、租税特別措置法第31条となる。

(長期譲渡所得の課税の特例)
第三十一条 個人が、その有する土地若しくは土地の上に存する権利(以下第三十二条までにおいて「土地等」という。)又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下同条までにおいて「建物等」という。)で、その年一月一日において所有期間が五年を超えるものの譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人(当該個人が非居住者である場合の所得税法第百六十一条第一項第一号に規定する事業場等を含む。)に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの(第三十三条から第三十七条の六まで及び第三十七条の八において「譲渡所得の基因となる不動産等の貸付け」という。)を含む。以下第三十二条までにおいて同じ。)をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、同法第二十二条及び第八十九条並びに第百六十五条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額(同法第三十三条第三項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額とし、第三十二条第一項に規定する短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該計算した金額を限度として当該損失の金額を控除した後の金額とする。以下この項及び第三十一条の四において「長期譲渡所得の金額」という。)に対し、長期譲渡所得の金額(第三項第三号の規定により読み替えられた同法第七十二条から第八十七条までの規定の適用がある場合には、その適用後の金額。以下第三十一条の三までにおいて「課税長期譲渡所得金額」という。)の百分の十五に相当する金額に相当する所得税を課する。この場合において、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。
2 前項に規定する所有期間とは、当該個人がその譲渡をした土地等又は建物等をその取得(建設を含む。)をした日の翌日から引き続き所有していた期間として政令で定める期間をいう。
3 第一項の規定の適用がある場合には、次に定めるところによる。
一 所得税法第二条第一項第三十号から第三十四号の四までの規定の適用については、同項第三十号中「山林所得金額」とあるのは、「山林所得金額並びに租税特別措置法第三十一条第一項(長期譲渡所得の課税の特例)(同法第三十一条の二(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)又は第三十一条の三(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例)の規定により適用される場合を含む。以下同じ。)に規定する長期譲渡所得の金額(以下「長期譲渡所得の金額」という。)」とする。
二 所得税法第六十九条の規定の適用については、同条第一項中「譲渡所得の金額」とあるのは「譲渡所得の金額(租税特別措置法第三十一条第一項(長期譲渡所得の課税の特例)に規定する譲渡による譲渡所得がないものとして計算した金額とする。)」と、「各種所得の金額」とあるのは「各種所得の金額(長期譲渡所得の金額を除く。)」とする。
三 所得税法第七十一条及び第七十二条から第八十七条までの規定の適用については、これらの規定中「総所得金額」とあるのは、「総所得金額、長期譲渡所得の金額」とする。
四 所得税法第九十二条、第九十五条及び第百六十五条の六の規定の適用については、同法第九十二条第一項中「前節(税率)」とあるのは「前節(税率)及び租税特別措置法第三十一条第一項(長期譲渡所得の課税の特例)」と、「課税総所得金額」とあるのは「課税総所得金額及び租税特別措置法第三十一条第一項に規定する課税長期譲渡所得金額の合計額」と、同条第二項中「課税総所得金額に係る所得税額」とあるのは「課税総所得金額に係る所得税額、同項に規定する課税長期譲渡所得金額に係る所得税額」と、同法第九十五条及び第百六十五条の六中「その年分の所得税の額」とあるのは「その年分の所得税の額及び租税特別措置法第三十一条第一項(長期譲渡所得の課税の特例)の規定による所得税の額」とする。
五 前各号に定めるもののほか、所得税法第二編第五章の規定による申請又は申告に関する特例その他第一項の規定の適用がある場合における所得税に関する法令の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

まあ長い。
ポイントとなるのは第3項第1号だ。先ほど所得税法で出てきた「山林所得金額」を「山林所得金額並びに租税特別措置法第三十一条第一項に規定する長期譲渡所得の金額」に読み替える、と書いてある。
おそらく、他の譲渡所得(たとえば株の売買)についても、それぞれ同様の読み替えが規定されていて、それら読み替えの結果を集約すると、先に紹介した国税庁のページの「※」になるのだろう。

家を売った儲けは、合計所得金額に加算される!

ともかく、家を売った所得は「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除」を考慮しない、生の金額で合計所得金額にプラスされる。そしてこの合計所得金額で配偶者控除が判定される。
だから、家を売った所得は「3000万円以下なら何円でも一緒」ということはなく、少ないにこしたことはない

配偶者控除以外にも「合計所得金額」で変わってくる税制、行政サービスはあるはずなので注意したい。

経費をもれなく計上せよ!

もちろん、所得を減らすためにわざと安く家を売るというのは本末転倒。所得(儲け)を減らすには経費を増やす――と言って語弊があるなら「かかった経費を漏らさず申告する」ことが必要だ。
ここでいう経費とは、家を買った際の諸経費や司法書士費用にとどまらない。新築時のオプション工事や入居後のリフォーム代なども含まれる可能性がある。「これは大丈夫?」と疑問に思ったら税務署に聞けばよい。

以上のようなことに気付くのは家を売るタイミングだが、勝負は家を買う段階から始まっている
何であれ、家を買ったり改良したりするのにかかったお金の証拠は、きちんと保管しておこう。大型家電の領収書も、住宅設備と認められるものなら役に立つかもしれない。

別に、きちんと整理する必要はない。「不動産重要書類」というファイルに無造作に突っ込んでおくだけでいい。あとで「良かった」と思える時が来る。
残しておくのは契約書、領収書、振込で支払ったのなら通帳のコピーなどもあるとベターか。
郵便局で収入印紙を買った時のレシートは、10年もすると読めなくなる。念のためコピーをとって原本とともに保管した方がよい。

 

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