特定保守製品、点検してる? 家を売るときに発生する義務とは?

  • 「特定保守製品」となっている設備を譲渡する際、持ち主には努力義務がある
  • 有償点検も努力義務だが、受けていなくても家を売ることに問題はない
  • 2021年8月に対象品目が大幅減、シールが貼ってあっても今は対象外の機器が多い

無事に持ち家の売買契約を締結できた。その際にヒヤッとしたのが「特定保守製品」である。
結論からいえば、何事もなかった。しかし家を売る、売らないに関わらず、私たちは設備の点検に対して責務を負っている。このことは理解しておいた方がよいと思う。

ただ、この制度については2021年8月に対象品目が大幅に減っている。その結果、「特定保守製品」というシールがついていても、現在は有償点検の責務がなくなっている場合が多い。その点も理解しておいた方がよい。

特定保守製品の所有者は何をしなきゃいけないの?

特定保守製品というのは、長年、点検せずに使用し続けると危ないと思われる製品だ。一部の家電やガス器具などが該当する。こうした製品は、製造後しばらく経ったら有償点検をしなさいというルールになっている。「しばらく」とは、我が家にあった製品では「製造から10年」だった。
2009年4月以降に製造された製品が対象であり、我が家の設備はこれに該当していた。

かつて、年代物の扇風機が発火するという事故が社会問題になった。扇風機以外にもこのような事故は度々起こっている。その対策として定められたのが「長期使用製品安全点検・表示制度」である。
対策の柱は「(有償の)点検」と「(シールを貼るなどして)注意喚起」の2つ。このうちの前者、所有者に有償点検の責務が課せられる製品を「特定保守製品」という。

我が家にあった特定保守製品は「浴室用電気乾燥機」と「ビルトイン式電気食器洗機」の2種目だ。

浴室乾燥とビルトイン食洗機は対象から外れた!

上記ページにもあるとおり、浴室用電気乾燥機とビルトイン式電気食器洗機については、2021年8月1日をもって特定保守製品の対象から外されており、現在は特定保守製品ではない。したがって現在は、製造時期を問わず有償点検の責務はない
しかし持ち家の売却当時に、これらはまだ特定保守製品であった。
ちなみに現状、特定保守製品として残っているのは「石油給湯器」「石油ふろがま」の2種目のみ。これらを首都圏の新しい戸建てで見かけることはあまりないのではないかと思う。

有償点検を受ける根拠は?

制度自体は承知していたのだが、実のところ、有償点検は受けてこなかった。

有償点検の根拠法は「消費生活用製品安全法」である。これによると、設備の所有者の行うべきことは以下のとおりだ。

(所有者情報の提供)
第三十二条の八 特定保守製品の所有者は、当該特定保守製品に係る特定製造事業者等に対して、所有者票の送付その他の方法により、所有者情報を提供するものとする。ただし、当該特定保守製品の点検期間が経過している場合は、この限りでない。
2 前項の所有者情報に変更を生じたときも、同項と同様とする。
3 特定保守製品取引事業者は、取得者の承諾を得て当該取得者に代わつて所有者票を送付する等の方法により、当該取得者による特定製造事業者等に対する所有者情報の提供に協力しなければならない。
(特定保守製品の所有者等の責務)
第三十二条の十四 特定保守製品の所有者は、当該特定保守製品について、経年劣化に起因する事故が生じた場合に他人に危害を及ぼすおそれがあることに留意し、特定保守製品の保守に関する情報を収集するとともに、点検期間に点検を行う等その保守に努めるものとする。

まとめると以下4点となる。

  • 所有者情報をメーカーに提供する
  • 所有者が変わったときにはメーカーに連絡する
  • 保守に関する情報を収集する
  • 点検期間に点検を行う等、保守に努める

つまり、点検は努力義務である。
また、「所有者が変わったときにはメーカーに連絡する」ことも努力義務である。それで、契約時に取り交わす書類の中に特定保守製品の話が出てくるのだろう。

点検を受けていない設備を引き渡して大丈夫?

法定点検を受けていない設備を買い主に渡して問題ないのか? 売買契約を結ぶ直前、このことが急に気になってきた。
念のため不動産屋に確認したが、「問題ない」との返答。自分の認識とも一致しホッとした。

そもそも点検は努力義務である。また、所有者が変わったときに、新しい所有者がメーカーに連絡することも努力義務である。したがって、点検を怠っていたからといって何か法令に違反するわけではない。

また、実際の不動産取引において、「あっ、この特定保守製品は法定点検を受けていませんね!」などと突っ込んでくる買い主はまずいないと思われる。

ということで、点検をサボってきた人も安心して家を売れる。

以下は余談に近いので、時間があればお読みいただきたい。

あまり熱心でないメーカーがある

ここで言い訳をしてもしょうがないのだが、メーカーだって特定保守製品の点検にはそこまで前向きでない場合があるのだ。

しばらく前に食洗機の具合が悪くなり、修理を頼んだことがある。
ちょうど法定点検の期間内であったため、修理窓口に連絡した際、法定点検の同時施工をお願いした。
しかし、修理窓口の対応は鈍かった。「特にご希望ならやりますけど、そこまで詳細に点検はしませんよ? 点検を受けても寿命は延びませんよ?」といった反応。「法定点検だから絶対に受けさせよう」という感じではなかった。

法定点検は窓口が別だというので、電話をかけ直した。が、修理と同時にやったからといって出張費が安く済むということはないらしい(まあこれはルールだから許そう)。その他諸々、やる気を感じない対応だった。
こうなると、真面目に対応するのがバカらしくなってくる。修理の際に分解はするわけだから、最低限の点検はなされるのだ。そういうことにして自分を納得させ、法定点検は受けなかった。

法令の趣旨は分かるのだが、本当に全員に点検を受けさせたいのなら、メーカーを含めてもっとガッチリやってほしい(国がやらせてほしい)。
そうでないと点検費用を支出する消費者としては決心が鈍り、安易な方に流れていく。

お金を出して点検したのに……

我が家で唯一、有償点検を実施したのがノーリツのガス給湯器である。
この給湯器、10年を経過したところでリモコンに派手なエラー表示が出続ける。点検するまでエラーが消えないという仕様である。チカチカする表示が煩く、仕方なく有償点検を受けたわけだ。
これには「何が何でも点検を受けさせる」というメーカの強い意志を感じる。やるならこのぐらい徹底的にやってもらわないと、わざわざお金と時間をかけて点検をしようとは思わない。

なので、給湯器に関しては胸を張って「点検しました」と言えるな――と思っていたら、何と!
屋外に設置するガス給湯器は特定保守製品ではないのである!

じゃあ、あの点検は何だったんだ? 調べてみると、ノーリツ曰くの「あんしん点検」だそうである。
要するに法令で定められた点検ではなく、メーカーが勝手に推奨している点検だった。

エラー表示が煩かったとはいえ、法定点検をサボって、自主点検を受けるというこのアンバランスよ。トホー。

 

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