【捨て身】好物件は「先行契約」でゲットする

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8月半ば。持ち家の売却については、各社の簡易査定の結果が出そろった。
家の中が片付かない以上、そこから先のフェーズへは進めないという状況だ。

一方、どこへ引っ越すかという件については、この頃大きな進展があった。
時系列に沿って読んでいる方にとっては大きな話題転換となるが、ここからしばらく、賃貸住宅を借りる話が主体になる(ただし、次の記事に限っては家を売る関連の話題)。

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注文の多い客

妻は毎日のように住宅情報サイトをチェックし、よい物件がないか探していた。

といっても探す範囲は広くない。
転居の目的が「通学時間の短縮」であり、学校に近いことが絶対条件だからだ。

学校に近いエリアには、ファミリー向けの賃貸物件が少ない。
あるにはあるが、価格と内容のバランスを考えるとイマイチで、食指が動かなかった。

建物のグレード

贅沢を言うようだが、私たちは「そこそこのグレードのRC造マンション」でないとダメ、という縛りをかけていた。
妻は終日、ほぼ横たわっている。騒音にはどうしても敏感になるので、防音性の高さは重要だ。集合住宅だと必然的にRC一択となる。
隣家からの騒音という点で、戸建てはマンションより有利に思える。しかし単なる木造住宅だと外からの音が結構入ってくる。今の家では、隣の家の子供が(家の中で)騒いでいると、窓を閉めていてもその声がかすかに聞こえるという。この程度で気になるのだから、アパートによくある鉄骨造は選択し得ない。結婚当初に住んでいた鉄骨造のアパートは、当時新築だったが下階の音が筒抜けだった。
アパートでもRC造というのは時々ある。しかし同じRC造でも、分譲マンションと単なるアパートでは壁や床の厚さに違いがあると考えられる。1階に店舗が入っているような独立系の賃貸にも同様の不安がある。結局は、そこそこ名の通った分譲マンションもしくはハイグレードの賃貸マンションでないとダメだと思っていた。

定期借家はNG

さらにもう1点、「定期借家」はダメ、という縛りもかけていた。
ふつうの賃貸(正確にいえば「普通借家」)だと、典型的には2年契約。2年経ったら更新料1ヶ月分を支払うことで半永久的に住み続けることができる。
これに対し「定期借家」と銘打った賃貸住宅は、基本的に契約の延長ができない。契約期間で最も多いのは2年、次に3年。稀に5年というのも見かけるが、ともかく期限が来たら契約の更新はできない。(できる場合もあるが、その時の家主の意向による。)契約が切れたら当然、出て行かなくてはならない。
私たちの場合、息子の小学校生活が2年以上残っている。だから「定期借家2年」というのは明らかにダメだ。「定期借家3年」なら小学校生活は新居で全うできるが、中学進学の際に必ず転居しなければならない、という時限爆弾を抱えることになる。これは落ち着かない。

25万オーバーの物件しか出てこない

以上2つの条件を加えると、検索で引っかかる物件は限られてくる。
騒音のことを考えると、分譲マンションの一室を賃貸に出している、いわゆる「分譲賃貸」が望ましいところだ。しかし分譲マンションを賃貸に出す人の多くは、「転勤で2年間だけ家を空けるので、その間だけ他人に貸そう」といった考えである。2年後には戻ってくるから「定期借家2年」という貸し方になる。
であるから、検索結果は常に寂しい。70平米のマンションの一室が月25万超えという、東京近郊の片田舎とは思えないスペックの賃貸物件が永く募集中のままになっているだけだった。逆に言うと、これより値頃感のある物件は残っていなかった。

好物件現る。現物を見ずにポチれ!

そんなある日、定期巡回中の妻が新着物件の情報を持ってきた。

お盆休みの真っ最中、新着物件が登場

一つの物件を数社が同時に仲介しており、一部の不動産屋が住所を間違えて掲載していたので当初は混乱した。しかし情報を総合すると、息子の学校にごく近い、築浅のマンションであるらしかった。分譲賃貸でありながら普通借家というレア物件だ。
さすがに、その建物のエントランスの映像が瞬時に思い浮かんで「ああ、あそこね」と言えるほど知っている物件ではなかった。が、自転車で時々通る道に面しており、土地勘はありすぎるほどある。
家賃は、持ち家のローンの支払いと比較すると、正直言って安くはない。しかし周辺相場からいって明らかな割高感はない。

すぐさま電話すると、いきなり無茶な通告

申し込みが遅くて競り負けるのだけは嫌だと思い、すぐさま不動産屋に電話した。
折悪しくお盆休みの真っ最中だったので、前にお世話になった不動産屋は休業中。SUUMOに掲載している数社のうち、たまたま最初に選んだ1社(地元の不動産屋)が、お盆期間ながら営業していた。

早速「内見したい」と申し込んだのだが、反応は意外なものだった。
曰く、まだ入居中なので内見はできない。しかし募集はすでに先着順で始めている。
どうしても早く決めたければ、内見せずに契約するしかないという。

究極のハイリスク「先行契約」とは?

あとで調べて分かったのだが、こういう形態は「先行契約」と呼ばれる。
通常の賃貸物件では「内見→申込→契約→入居」という順であるところ、「申込→契約→内見→入居」という順になる。
内見せずに契約するので、いざ内見して「やっぱりダメだ」という判断になった場合、違約金(典型的には賃料1ヶ月分)が発生する。なかなかハイリスクである。

似た言葉に「先行申込」というのがあるが、こちらは「申込→内見→契約→入居」であり、内見前に申込はするが、実際の契約は内見後なので、まだリスクは低いといえる。

実はこの数年後、もう一度賃貸への引越を経験するのだが、3月末入居というハイシーズンながら、「先行契約」の物件にはついぞ出会わなかった。そういう意味で、今回の物件はかなり強気であったように感じられる。

そして決断

電話を切ってから、あらためて物件の情報を10分ほど調べた。
悪い物件ではないという自分の直感を信じ、腹をくくって申し込むことにした。

しばらくして、私たちが見事1位を獲得したことを告げられた。
早押しには勝ったが、さて、これが正解だったのかどうか――。

審査結果が来ない!

順位確保までは疾走感のある展開だったが、ここから先が長かった。

契約に向けて、まずは審査が行われる。

私の本職はカタい企業の会社員なので、自分で言うのも何だが、まず大丈夫とは思った。
しかし最終的にはオーナーの判断になるので、100%安心はできない。

結局、審査には通ったのだが、完了まで実に1週間も待たされた。
正直「何をチンタラやっているんだ」と思ったが、この物件のオーナーは個人であり、マンションのデベロッパーに管理を委託していることがあとで分かった。間にワンクッション入っており、さらにオーナーの本職が不動産業とは限らないわけで、まあ仕方ないかというところではあった。

内見なしで引越計画を立てるには

それと並行して、仲介を頼んだ不動産屋に何度も質問し、疑問点の解消に努めた。
何せ、内見ができないのである。机上で検討を進めないと、引っ越し後の家具の配置など全く決められない。

幸い、物件の管理を行っているのがマンションを建設したデベロッパーだった。そのため寸法の入った新築時の間取り図を入手することができた。
縮尺を考えてプリントアウトし、長さを定規で測って家具の配置を検討することにした。

ただ、今回のように正確な図面を必ず入手できるわけではない。
この次の転居の際には3、4件の物件を真剣に検討した。しかし新築物件ですら、寸法の入った図面を入手することはできなかった。
内見できれば、その際にひたすら寸法を測ることで解決できる。一方、内見できない場合には間取り図を信じて検討するしかない。

また、賃貸住宅としての設備についても確認した。
ガスコンロはあり、エアコンは4部屋に対して2台と中途半端だがあり。照明は洗面所やトイレなど小物だけあり、とのことであった。
細かいことだが、何を持っていくのか、何を買う必要があるのかを検討するためには必要な情報だ。

いよいよ契約、初期費用は先払い!?

大体の疑問点が解消した8月末、いよいよ契約となる。
家賃が高いだけに初期費用は100万程度。家が売れれば全く問題ない金額だが、実際にはまだ売り出してもいない。ここから資金繰りに関して綱渡りが始まることになる。

初期費用は契約時に持っていくのかと思ったが、実際には「契約前に振り込め」と言われ、少々面食らった。
見ず知らずの会社(といっても準大手のデベロッパーではある)に100万近くを振り込むのは若干不安がある。ウェブで当該デベロッパーの電話番号を調べ、事務所に電話をかけた。相手と話をして、自分なりに確証を得てから振り込んだ。

契約締結、物件の素性は不明

その後の休日、不動産屋に出向いて契約手続きを行った。

興味があったのは、今日現在住んでいるのがオーナーなのか否かということだ。が、契約当日には判明しなかった。
ただ、実際に入居したところ、オーナーではない別の人が居住していたと判明した。というのは、前の居住者の氏名が複数ルートからダダ漏れだったから。その一端には後の記事で触れる。中でも、新居に備え付けの「説明書ファイル」の中から、先住者の賃貸借契約書が出てきたのには呆れた(皆さん注意しましょう)。今回の賃借人交代に伴い、ちゃっかり家賃を値上げしていたこともこれで分かってしまった。
ともかく、今回の物件は「マンションを買ったはいいものの、都合により転居することになったので、仕方なく他人に貸す」という成り行きではない。おそらく最初から誰かに貸す目的で部屋を買い、賃貸住宅として運用していた部屋なのだろうと想像される。定期借家でないこともそれを裏付ける。

ともかく、現在の借り主が9月末退居、私たちが11月1日入居という日取りが正式に決まった。
転居まであと2ヶ月。準備期間としては長すぎず短すぎず、ベストなタイミングだ。

 

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