家の売却がすっかり終わった。そこで、言ってもしょうがないことをあれこれ振り返ってみる。
売出価格はこれでよかったのか?
まず、「いつから買い手主導になったのか?」ということを考えてみる。
私の勝手な感想だが、当初は売り手主導だと思っていた。つまり私自身のペースで売却活動を進めているつもりだった。
おりしも隣家が高額で売れた直後だった。だから、価格交渉にもつれ込んでも強気で進めていけると思っていた。
しかし実際には、販売開始から3ヶ月を経て、そもそも価格交渉のテーブルにつけないという状態だった。ようやく価格交渉まで話が進んだのは5ヶ月が経過しようという頃。当初強気だった私もかなり弱気になっていた。
このことから、売却活動の期間が長くなればなるほど、売り手の気持ちは「売り手主導」から「買い手主導」へシフトしていくということが、実感として言える。
ただ、売り手主導か買い手主導かというのは、期間だけが問題ではない。むしろ物件の魅力度と売出価格のバランスですでに決まっているような気もする。
今回、活動が長引いたのは「売出価格が高すぎた」ということかもしれない。現に、実際の成約価格は売出価格を100万円以上下回った。このことからしても、欲を出さずに安めに売り出した方がよかったようにも思う。すべて結果論ではあるが。
売り出し前の修繕は必要? 不要?
次に、「家を売る前に修繕(リフォーム)する」ことの是非について。
私自身は、素人ながら「修繕はせず、現状で売るのがよい」と思っている。
どこかの不動産屋に相談した時もそういう返答だった。
「壁に穴でも開いているんだったら別ですが、そうでないんでしたら不要では……」
そういう話だったと思う。
買った人が好きに直せばいい
長年住んだ家だから、いろいろと傷んでいる箇所はある。
我が家の場合、フローリングには大きな傷が数ヶ所、小さい傷は無数にあった。壁には大小さまざまな凹み。ガス給湯器は10年を経てそろそろ寿命が見えていた。これらを直してから売りに出した方が、買い手の印象が良いことは間違いない。
しかし、100万円かけて修繕して、100万円高く売れるという保証はない。150万円高く売れるかもしれない一方、同じ値段でしか売れないかもしれない。
かなりの賭けであるが、不動産屋があまりお勧めしないということは、分が悪いと想像する。
また、売り手が良かれと思って行った修繕が、買い手のニーズに合わない可能性もある。
せっかくフローリングを直しても、買い手は「この色が気に入らないから自費で張り替える」と言い出すかもしれない。給湯器だって「ウチはお湯をよく使うからエコジョーズにするんだ」と言うかもしれない。
これが中古物件であるということは買い手もよく分かっている。築年数なりの傷みは放置するのが得策ではないか。
リノベ物件は割高
あと1点、買い主からすると「修繕済みは割高」と映ることを指摘したい。
最近、古いマンションを中心に「リノベ物件」をよく見かける。買う側としては新築に近い状態ですぐ入居できるのでお手軽だ。一方、コスパという点では疑問符がつく。
古い物件を買い取って、リノベーションを施して自ら売りに出すという業者もある。そういう会社の物件であれば、間違いなく「リノベーション費用に対する利潤」が販売価格に上乗せされている。
同じ内容のリノベーションを行うなら、買い手が現状のまま購入し、自らリノベーション工事を発注する方が安く済むと考えられる。もちろん、買い主が自分のニーズに合った施工を行えるという利点もある。
とはいっても、とにかくすぐに入居したいというニーズは存在する。購入してからリフォームなどと悠長なことは言っていられない、という人も一定数いる。そういう人にとっては「リノベ物件」は有難い存在といえる。
また、古すぎて忌避されるような物件は、見た目の改善が重要だ。リノベによって、元々その物件が眼中になかった人を惹きつける効果も期待できる。
ただ、割高であるという事実は変わらない。
私たちの売っていた戸建ては築10~15年程度だった。こうした戸建てに対して「リノベーション」と呼べるほどの修繕を実施する人もあまりいないだろう。が、多少の修繕を加えて「給湯器は新品に交換済み」などと銘打ち売り出すことはあり得る。こうした場合、買い手が十分に賢ければ「家を売るために修繕した→修繕費に対する利潤が上乗せされている→割高」と察する可能性がある。
結論:修繕はしなくてよい
以上より、私はハウスクリーニング程度しかお金をかけず、ほぼ現状のまま売り出すことにした。そして、おそらくだが、実際に物件を買った人は大きな修繕を加えることなく住んでいる。
総じてうまくいかなかった売却活動だったが、この点は正解だったと思っている。
当時の不動産市況
最後に、これは感想ではないが、売却活動終了が見えた段階で不動産屋から聞いた話をメモしておく。
査定件数が激増
2020年のコロナ禍で、査定の依頼は激増したという。一時期「テレワークが一般的になり、郊外でもいいから広い家を志向する人が増えた」といった報道もあったので、その関係だろうか。
そのわりに郊外の我が家はしばらく売れなかったのだが……。
査定の依頼が増えることは営業のチャンスが増えることだから、歓迎すべきことのように思える。
しかし依頼が多すぎるのも考えものなんだそうだ。一括査定サイトからの査定依頼に対しては1件あたりいくらかの紹介料を支払う必要があるそうなのだが、その予算が尽きそうだという。
手間でなければ(いや絶対手間だが)、依頼する側も一括査定サイトをあえて使わず、各不動産業者に直接依頼していったほうが、不動産屋の対応はよくなる、かもしれない。
で、査定が終わると、受注するため顧客と面会したいのだが、コロナ禍なので、特にご老人は会ってくれないという。今時だからzoomなり何なりオンライン面談もできるだろうが、ご老人だとそれも無理だと。
コロナが落ち着いた今となっては半分笑い話のようだが、そういう時期もあったということだ。
物件は不足気味
そして当時、物件は払底気味であったという。そのわりに我が家は(以下略)。だからこそ「仲介手数料半額」という大盤振る舞いが必要になったのだと思う。
また、当時は「ウッドショック」などという言葉がニュースで聞かれたほど建材不足であった。戸建業者が高値で材料を仕入れていたため、新築価格が上昇。つられて中古価格も上がったとのこと。不動産価格の高騰は本記事執筆時点でも続いている。これは、私が若い頃の不動産バブルを思い起こさせる。
私たちはちょうど今、息子の通学の関係で転居を繰り返すフェーズにある。だから、ここ数年は賃貸暮らしが続くと思われる。しかし、かりにそうでなくても、今は持ち家を新たに買うより賃貸暮らしを続けた方が良いと思っている。