引き渡し直前に慌てたこと、逃げ切ったこと、呟いたこと

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  • 軽量ブロックやタイルは、自治体のゴミ収集では持っていってもらえない
  • ないと思っていても、残置物は結構あるので注意
  • 作る義務はないが、簡単な引継書があると親切

売買契約の締結が終わり、あとは残代金の精算を待つだけとなった我が家。
精算日=引き渡し日であるため、旧居を空にしなければならない。しかし、実際に作業を始めると細かい困り事がいくつか出てきた。

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呪いの軽量ブロック

旧居には、メンテナンス用などの名目でいくつか私物が残してあった。これを撤去しなくてはならない。

気が重かったのが軽量ブロックだ。
ホームセンターに行けば1個100円ぐらいで売っているお手軽な資材で、洗濯機の足場として使っていたのだが、これ、廃棄がものすごく厄介なのである。

石は「燃えないゴミ」では捨てられない

詳しくは調べてみてほしいのだが、石やレンガに類するものは、多くの自治体ではゴミとして回収してくれない

正規に捨てるとなると産廃業者に依頼することになる。しかし料金は、運搬料を含めると1万超えというところもある。

運搬料を避けるため、業者の事業所へ持ち込むということも考えられる。が、業者によっては多量の廃棄物を想定した料金体系であり、持ち込んでも依然として高額だ。そして事業所が便利な立地にあるとは思えない。

100円で買ったものを捨てるのに1万円かかるとは、とんだトラップである。
「PCリサイクル」のように、買うときに多少高額でもいいからリサイクル料金を上乗せしておいて、回収まで面倒を見てほしいものだ。

解決策は「ババ抜き」

では今回、私がどうしたかというと、うまいこと言って買い主に押し付けてきた。

契約の前後に、残置物をどうしますか?というやり取りを行った。この時、過去の外構工事の際に受け取った予備のタイルや敷石とともに、例の軽量ブロックを挙げ、「万が一の破損に備えてお譲りしますが、どうですか」と提案した。
幸い、「使えるものは使う」という感じの買い主は「じゃあ残置でOK」となった。
正直、これには救われた。予備のタイルも軽量ブロックと同様の捨てにくさである。

印鑑が違う!

引き渡しを1週間後に控えたある日、住宅ローンを組んでいる某金融機関から電話があった。
一括返済の書類を受け取ったが、捺してある印鑑が届出印と違うという。
ああー、やっぱり「じゃない方」を捺してしまったか。

ダイソーの印鑑で数千万円借りた男

どの印鑑が正解だったか、目星はついている。会社に置きっぱなしにしてある認印だ。たしかダイソーで買ったやつ。
何でそんなショボい印鑑で口座を作ったかというと、会社の都合で作らされた口座だから。普段使いする気がないから、机上にあった印鑑を適当に捺して口座を作ったのだ。口座の利用頻度もごく低かった。
ところがそれから十数年後、ダイレクトメールが来て「意外に金利が低いじゃないか」と気付き、住宅ローンを借り換えて今に至る。
主な用事がローンの返済だから、日頃行う取引といえば入金のみで、暗証番号すらあやふや。印鑑がない今、「本当に本人ですか?」と問われると答えに詰まりそうだ。
住宅ローンを借り入れた際の金銭消費貸借契約書があれば届出印は判明し、誤った印鑑で書類を作ることもなかったのだが、そもそもこれの原本が行方不明という体たらくである(会社のパソコンにスキャン画像は保存してあったが、それに気付いたのは後日)。

印鑑は簡単に変更できる(いいの?)

正解とおぼしき印鑑は会社にあるが、当時はコロナ禍。月に1回ぐらいしか出社しないという勤務スタイルだった。印鑑のために出社するというのも嫌だ。
100円の印鑑が登録されているというのも嫌なので、これを機に印鑑を変更することにした。幸い、口座を開いた支店でなくても手続きは可能で、最寄りの支店は自転車圏内にある。
万が一にも手続きが遅れてはまずい。あわてて最寄り支店に急行、無事に手続きを終えた。完全に私のヘマなのに、景品の食品用ラップをもらってしまい恐縮。

しかし、身分証明書の提示だけで簡単に印鑑を変更できるというシステムはどうなのか。いや、そもそも印鑑1本で認証するシステム自体がザルなのか。

引継書を作った

多分、これは珍しいことだと思うのだが、引き渡しに際して引継書を作った。

会社で働いている人だったら分かると思うが、異動になると後任の人に向けて業務の引継書を作ると思う。これがないと後任の人は大変だと思う。
家に関しても同じことで、住人でないと詳細が分からない「ちょっとしたこと」を引き継いだ方が親切だと思い、文書にまとめて渡すことにしたものだ。

内容としては、各設備の購入年月や修理歴、見た目には分からないピアノ設置スペース(床下が補強されている)、近隣住民の情報、町内会の情報、自分で施工した家庭内LANの配線図などである。
これは、大袈裟に言えば「形を変えた自分史」のようなものだ。書き始めると楽しくなってしまい、10ページほどになってしまった。

ただ、引継書の作成は義務ではない。また、あまり詳細に書きすぎると「なぜ契約前に教えてくれなかったのか、もっと前に知っていたら契約しなかった」などと言われかねない。配線図のように、淡々と事実を述べるだけの書面にとどめておくのが無難かもしれない。

引き渡し直前

いろいろあったが、ついに引き渡しまで数日となった。

ホームセキュリティ終了

まず、セントラル警備保障を呼んだ。ホームセキュリティを止めるためだ。
指定した時刻に旧居で待っていると、かわいらしい軽自動車で担当者がやってきた。隠しコマンドで親機の電源を切り、預けていた鍵を返してもらって手続きは終了。

ちなみに、親機やセンサーは買い取りだったので私の所有物であり、メルカリ等で売り払おうかと思ったこともあった。
しかしデリケートな機器でもあり、結局は「もし、継続して加入されるのであればご活用ください」と、残置物扱いで買い主に引き渡してきた。

偽装工作の大道具、小道具

その後、細々した残置物を片付けて終了…という心づもりだったのだが、意外に荷物が多くて、一度では片付かなかった。

大きな誤算その1として、子供部屋に残しておいた照明器具がある。
カバーが割れていたのに加え、新居の部屋数が旧居より1つ少ないために余っており、旧居の防犯用として残置し、常時点灯していたものだ。
これも一応買い主に「残置でいいですか」と聞いたのだが、さすがにカバーの割れた照明はいらないと言われ、今日引き上げる必要がある。

もう一つの誤算は自転車だ。
不要な自転車が2台あり、転居時に粗大ゴミで出せばよかったのだが、これも防犯用(誰か住んでますアピール)として駐輪スペースに残しておいた。
もはや旧居で粗大ゴミとして回収してもらうことはできないので、一旦新居に引き上げる必要がある。

照明は頑張れば持ち帰れるが、自転車2台は明らかに一度では無理で、夕方、息子を伴って再訪することにした。

最後の入室

日暮れの近い旧居に、息子を伴って入る。照明はトイレや玄関など小さいものが残っているだけで、雨戸が閉まっているので薄暗い。2階の西側にある旧・子供部屋だけが、割れた照明器具のおかげでかろうじて明るさを保っていた。

まずは照明を撤去する。カバーが割れているので細心の注意を払ったが、何かが落ちてきた。BB弾だ。
そういえば、照明のカバーが割れたそもそもの原因は、息子が室内でBB弾を発射したからだった。この後も時々、新居でBB弾に出くわすことになる。

次にポストの中身を整理する。チラシは多数入っているが、私宛の郵便物(メール便含む)はゼロ。半年ほど経ってようやく、旧居への誤配をほぼ撲滅できた。

それぞれの「我が家」観

これで用事は済んだので、部屋を出る。もうこのドアを開けることはない。

生まれて初めての引越しを経て半年、「やっぱ、こういう家がいい」と息子が言う。
実は引っ越すまでは、立派なエントランスのあるマンションに憧れていたのである。しかし実際のマンションとは、上下に他人が住んでいて存分に遊べないという窮屈な環境だ。
失って初めて分かるものがあるのだよ、と偉そうに言おうかと思ったがやめた。

私自身、この家には複雑な感情を抱いている。
家を買うというのは一世一代の大勝負である。結婚後約1年でこれを成し遂げたという達成感が当時はあった。また、書斎というほどでもないが机と本棚のある自室もでき、育児が一段落したらここで趣味活動をやるのだ、という夢もあった。
しかし実際には、辛いことの方が多かった。入居の際に妻は入院中で、体調はその時から戻らない。息子はいつまでも手がかかる。コロナ禍でテレワーク中心になるまでは自室に滞在する時間などほぼなく、帰宅後は台所と布団の往復で一日が過ぎていった。
そうはいっても、これまで家族を守ってくれた大事な家だ。そこは素直に感謝すべきところである。

鍵をしっかり閉めてから、「ありがとうございました、だな」と呟いた。
きちんと挨拶するつもりが、最後の最後で照れが出た。

息子は相変わらず無邪気に「バイバーイ」と大声で言った。

延長戦

ところが、これで話は終わらない。
引き渡し直前になって、元ご近所さんから「○○をポストに入れときますー」と電話があった。そこで引き渡し前日の昼に再度、旧居を訪れることになったのである。

取説類と一緒に置いてきた引継書も、見直せば見直すほどボロが見つかる。この時に差し替えておこうと思ったのだが、在宅勤務中の昼休みなので慌ただしく、印刷を忘れて家を出てしまった。仕方なく、旧バージョンの文書を引き上げて、新バージョンの文書は決済の時に買主へ渡すことにする。

旧居は相変わらず長閑であった。家の前の畑では農作業が行われている。
ポストの中身を出した後、時間もあまりない中、全ての部屋を見て回る。状態の確認というよりは、別れの挨拶だ。
数日前と同様、この家での10年が思い起こされ、そして複雑な心境になった。しかし約10年間、建物としての役割を十分に果たしてくれた旧居にはやはり感謝せねばなるまいと、これまた同じ結論に至ったのであった。

今度こそ「ありがとうございました」と頭を下げ、施錠してきた。

 

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