その時、歴史が動いた

「近くで家、売ってますけど、買いませんか?」という怪文書が来た話を前の記事に書いた。
その話の続きをする。

プロローグ:怪文書到着、からの隣家売却
それはコロナ禍の8月、まさに夏真っ盛りの頃。 テレワーク中の気分転換でポストを見に行った時のことだった。 怪しげな郵便物が1通、入っていた。 怪文書の中身は…… 封書ではなくミニレターで、宛名は手書き、さらに名字だけしか書かれていない。 ヤ...

怪文書を見た妻の反応は……

いろいろ意外すぎてポカーンとしてしまった。が、ひとまず、晩酌に向けて妻にネタを提供することにした。
夏休みで息子が家にいたので、直接話すのは気が引けて、メールを送付。

付き合いのない不動産屋からピンポイントでDM届き(あとで見せるわ)、
ん?と思ってSUUMO見たらこれだよ。
【SUUMOのURL】

この価格で本当に売れるんだったら、うちも今すぐ引っ越したい。
(予想としては、だいぶ値下げしないと売れない)

 

妻の反応は予想と違っていた。いや、予想できたといえばできたか。

よっしゃーうちも引っ越すぞ!

「転居熱」に火がついた

実は以前から、「いずれ引っ越そう」と話してはいた。

直接の理由は息子の進学だ。
中学受験はまだまだ先のことで、志望校など全く絞り切れていないのだが、それだけに不確定要素が大きい。
今の自宅から30分程度で通える範囲の学校は限られている。進学先によっては転居もやむなし、というのが夫婦間のコンセンサスだった。

不便からの脱却

さらに妻は、進学とは関係なく、早くどこかへ引っ越したいという思いも持っていた。

まず――これも息子に関係するのだが――「学校が遠い」という不満があった。
通っている当人が「遠い」と嘆くだけなら「脚を鍛えろ」と言い放つのみだ。が、遠さゆえの不便は親にまで及び、妻も常々嘆いていたのである。

寝坊して間に合わないから親が送っていくとか、学校に忘れ物をしたから親が取りに行くとかいうのは、対応するのが私だから、私が我慢すればよい。

しかし、遠いがゆえに帰り道でトラブルがしばしばあり、これは妻にも影響があった。
寄り道のために帰宅が遅くなった。
同じ方向に帰る友達と大喧嘩をした。
一つ一つは「その理由では引っ越さないでしょう」というレベルの問題である。
ただ、そのたびに学校へ電話したり、予定していた時刻に家庭学習を始められなかったり――そんなことが週の半分ぐらいあり、妻の心を乱すには十分だった。

その他、「立地がクソ田舎である」「無駄に広いから家の中が散らかっている」「近所の人(注:家を売ろうとしている隣人ではない)が嫌い」等、妻としては今の家に対して相当ネガティブな感情を抱いており、ようやく逃げ出すきっかけが見つかった、ということであったらしい。

千載一遇のチャンス?

確かに、悪い話ではない。
何の変哲もない住宅地の、ありふれた建売住宅である。普通に考えれば、経年により建物の評価額は下がる一方だ。土地の価格も現状維持がせいぜいといったところだろう。
それが今なら、買値以上で売れるかもしれないのだ。10年以上居住したにもかかわらず、である。

また、台風に代表される自然災害が年々激しくなり、大地震の確度も日増しに高まっている。そんな中、不動産を所有することに対して漠然とした不安があったのは事実である。
賃貸住宅へ引っ越せば、不動産の所有に因るリスクから逃れられる。

さらに言えば、購入後10年を経て、持ち家の経済的なメリットが相対的に少なくなってきていた。
まず、住宅ローン減税が昨年末で切れた。これまで固定資産税は減税分で支払っていたのだが、今後は新たに捻出しなければならない。
会社から出ている利子補給も、購入後10年を超えると金額が段階的に減ってくる。
一方で、家屋や住宅設備の老朽化が進んでいる。今のところ何も手を入れていないが、そろそろ外壁の更新を検討する時期だし、ガス給湯器、食洗機などの設備もいつ壊れるか分からない。物入りな上に面倒だ。

経済的にはマイナスだが……

そうはいっても、だ。
いずれ引っ越すにしろ、経済的には、ギリギリまで粘って引っ越すのが有利と考えられる。

この先、息子が就職するまでは転居が続くと考えられ、新しく家を買うという選択はしばらくない。

すると賃貸へ引っ越すことになるわけだが、単純に月々の支払いだけ考えても、今のローンの支払いより、新たな家賃のほうが明らかに高くなる。
正確に言えば「持ち家に特有の費用」もあるわけだが、ローンにその費用を加えても家賃には及ばないだろう。

 

変化を嫌う自らの性格も相まって、それとなく慰留に努めたが、結果としては「その時、歴史が動いた」と相成ったのである。

 

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