不動産の引き渡し当日、手続きに役立ったツールは何か

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  • 引き渡し当日は時間との戦い、迷惑をかけないよう万全の準備を
  • ネットバンキングの利用で時間と手数料を節約できる

そして迎えた引き渡し当日。今のところ「実は……」といったどんでん返しは起きていない。
一連の「事業」がようやく一段落するという嬉しさはあるが、やはり一抹の寂しさもある。外は小雨。

早めに家を出るつもりだったが、結局は息子の登校より遅くなってしまった。世相を反映してか、9時台の各駅停車は空いている。
指定された時間に都心の某銀行支店へ出向く。挨拶もそこそこに「作業」が始まった。

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司法書士の存在意義

今日の主役は司法書士である。
契約行為に際して司法書士が出てくる理由は、私の理解では、「ズルをしない人」が必要だから。

鶏が先か、卵が先か

今日の契約行為は「私が家の所有権を譲渡する代わりに、代金を受領する」ことである。ここで、家の代金を受領するための必要条件がある。家に対する第1位の抵当権が、買い主に資金を貸すA銀行に設定されることだ。
第1位の抵当権は今日現在で「私に資金を貸しているB銀行」に設定されている。だからまず、これを剥がす必要がある。しかし「剥がすんだったら先にお金返してよ」とB銀行は言う。
私がお金を返すには買い主から代金を受領する必要がある。そのためには買い主に対して住宅ローンが実行されねばならない。それにはA銀行の抵当権の設定が必要、となって振り出しに戻る。
つまり、手続きの順序関係を完全に守ろうとすると堂々巡りのようになってしまうのだ。

司法書士が超速で作業することで問題解決

そこで司法書士が登場し、「私が責任を持って本日中に抵当権の解除と設定をします」と宣言する。A銀行は腹を括ってこの人に任せる。すなわち、A銀行は抵当権設定の数時間前にローンを実行する。
これにより、先ほどの「着火しない無限ループ」に火がつく。A銀行が買い主へローンを実行→買い主が売り主(私)への代金支払い→売り主がB銀行へローン返済→司法書士がB銀行へ走って「抵当権を剥がしてきてください」という委任を取り付け→さらに法務局へ走っていって、所有権の移転と抵当権の解除・設定……という一連の手順が実行される。そして今日の営業終了時点ではキレイな状態になっている、という寸法である。

一人ではスケジュール的に厳しいということなのか、司法書士は2名体制だった。

カネの飛び交う現場

ともかく、司法書士費用が発生することは確定的であるため、まずそれを支払う。忙しいので現金で用意してきてくれと言われており、その通り現金で支払った。
買い主も事情は同様だが、買い主のほうは数十万円を支払っていた。「何だこのボッタクリは!?」と一瞬思ったが、司法書士の報酬以外に登録免許税の立替分が含まれていたようだ。物件価格の2%だそうで、自分もかつて支払ったのだろうが、忘れた。なかなかお高いことである。

今や、銀行内にいてもネットバンキングで処理する時代

必要な書類にサインするなどして、いよいよローンの実行となる。
一昔前だったら、銀行の中にいるので振込用紙を使った手続きになったと思う。確か家を買った時はそうだった。が、今やネットバンキング全盛である。私も売主も、スマホをポチポチやって手数料を節約していた。後でも触れるが、スマホ等を使い、手元で資金の移動ができるよう前もって準備しておくべきだ。この際、一日の振込限度額の設定にも注意したい。
ネットバンキングで残高を逐一監視していると、売主から「手付金を除いた残金」と「固定資産税の日割相当額」が振り込まれてきた。これをすかさず司法書士に伝えると、司法書士が私のローンを組んでいる銀行に連絡。じきに私の口座からン千万円が引き落とされ、ローンが全額返済となった。

安心していたのもつかの間、今度は仲介手数料の残額を支払う。
先日、契約締結の際には「数日以内でOK」という話だった。しかし今日は「この場で振り込んでくれ」と言われ面食らった。振込手数料ゼロで済む銀行の口座に十分な残金がなく、あわててネット上で資金をかき集めた。

思い出の品はいらない

ともかく、一連の手続きのうち、私の関わる部分は終わった。

最後に「登記識別情報はいりますか?」と司法書士に尋ねられた。

今は「権利証」はない

以前だと不動産には「登記済権利証」という証明書があった。その紙がないと登記の変更はできなかったのだと思う。
しかし最近はそれが紙ではなく、パスワードのような、12桁の「登記識別情報」になっている。このパスワードを知らないと登記関係の手続きはできない。逆にこれを知っていると、(故意に)登記情報を変更することがかなり容易になる。

そんな重要な「パスワード」なので、新規に発行された際には即座に目隠しシールが貼られる。だから私自身、一度もその登記識別情報とやらを目にしたことはない。必要な時だけシールが剥がされ(大抵は司法書士の手による)、使い終わったらまたすぐに目隠しがなされる。
私の場合は、住宅ローンの借り換えの際に一度剥がされたはずだ。が、即座に新しいシールで覆われてしまっている。だから、不動産の持ち主なのに、中身を見たことはない。

「廃パスワード」を記念にとっておく?

今回、この登記識別情報を使って、土地・建物に対する私の登記を抹消する。これで登記識別情報は用済みとなり、持っていても何の役にも立たない。いってみればアカウントを廃止したあとのパスワードのようなものだ。
その、抜け殻のようなものを「要りますか?」とわざわざ問うてくるのには理由がある。どうも、記念にとっておきたいという人が結構いるらしいのだ。

以前の私だったら、脊髄反射で「要ります!」と答えていたと思う。
しかし私も歳を取り、自分自身のことがよく分かってきた。すなわち私は、収集癖があるようでいて、実はモノに対するこだわりは強くない。わざわざ郵送料を払って、将来ゴミになるものを入手するのは馬鹿げている。

結局「要りません」と断り、今度こそ用事はすべて終わった。都心のビル街に雨が降り続いていた。

 

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