アート引越センターに見積を依頼した件、続編。話は見積内容に戻る。
オフシーズンでこの価格は妥当?
引越の料金を決める要素としては、荷物量の他に移動距離もある。
今回の場合、引越し先は直線距離で2km以内なのでピストン輸送も可能。したがって標準的なトラック1台でよいだろうとなった。引越先にはエレベーターがあるのでクレーンのような特殊車両も不要。純粋な輸送費用は一番割安な部類に入ると思われる。
決定金額は税込で約176000円だったのだが、内訳は以下のようになる。
基本料・運搬料 | 64,900 |
作業員人件費 | 59,400 |
段ボール | 24,750 |
その他梱包材 | 5,918 |
エアコン移設費(2台) | 48,400 |
洗濯乾燥機移設費(1台) | 6,600 |
液晶テレビリサイクル費(1台) | 6,050 |
冷蔵庫リサイクル費(1台) | 8,470 |
値引 | -48,607 |
計 | 175,881 |
この価格が高いか安いか?
他社見積との比較はできないので、あくまで素人の肌感覚ではあるが検討してみた。
人件費は限界値?
まず、家電関連は追加の定額メニューであり、他の業者に外注するため値引きの対象外と考えられるので、計算から除外する。
見積上、人件費は3名分(@19800円)となっている。管理費等を考慮するとこれはギリギリの価格だと思える。しかも実際には、当日午後にヘルプ1名が参戦したのでトータルで「3.5人日」かかっている。文句はない。
梱包材は高そうだが……
また梱包材が、段ボール70箱で25000円弱(1枚あたり350円程度)、布団袋その他で6000円程度、合計で約31000円。
ここに結構な利益が乗っているのだろう。が、自前で新品の段ボールを調達すると1箱200円では済まないだろう。使用後の回収まで考慮すると許容範囲だ。
これらを差し引いた残額が、トラックの使用料や「レンタル梱包材」の使用料など。計算すると約16000円にしかならない。
食器や靴、ハンガーに掛かった洋服を運搬する際に「エコ楽BOX」と呼ばれるレンタル梱包材を使うが、いくら再利用可能といっても、1回使った際の損料は1000円を超えそうだ。その他、壁や床を養生するためのシートにも損料は発生するだろう。
そうすると、純粋なトラックの使用料は10000円前後と推測される。レンタカーの価格を考えると特に割高とは思わない。
結論
以上、見積を精査してみたところ、内訳が正しいとするならば、利益率が高そうなのは段ボール等の使い捨て梱包資材ではないか、という印象を受けた。
その梱包資材に関しては、引越当日、「儲けのためにはそこまでするか」という光景を目の当たりにするのであった。
オーダーカーテンも引越屋に頼める
決定したからこれで話は終わりかと思ったが、ここからがまた長かった。
さすがはアートな営業、「ついでにこれもどうですか」という提案が延々あったのだ。
まず「カーテンはどうしますか?」という問いがあった。
これまで、カーテンは引っ越すたびにオーダーしてきた。妻が持病のため、紫外線をしっかり遮る必要があるためだ。なるべく隙間を作らないためにはオーダーが安心だし、生地もUVカットのものを確実に選ぶことができる。
今回、引越先のリビングが無駄にワイドスパンとなっており、天井も今より高い。今のカーテンは10年以上使ったので全部捨て、新しいカーテンを一式オーダーするつもりでいた。
そのことを伝えると、営業氏、待ってましたとばかりに「実は弊社でオーダーカーテンを扱っておりまして……」。
引越業者がカーテンを扱うのは不思議ではないが、正直、これまで聞いたことがなかった。
そのうちカーテンの採寸もしなきゃなー、でも10年前に頼んだ業者は店を畳んじゃったみたいだし――とモヤモヤしていたところなので、まさに渡りに船。
オーダーカーテンなんてどこに頼んでも似たような価格でしょうと思い、ついでにお願いすることにした。この選択が吉と出るか凶と出るか、それは追い追い書いていこう。
家電も売ってる!?
これで調子づいたのか、営業氏はさらに「家電」「ハウスクリーニング」と立て続けに紹介してきた。
家電については、引越を機に冷蔵庫の買い換えを考えていたので若干食指が動いた。
営業氏曰く、家電にとって移動は負担になる。長持ちさせたいなら新しいものを直接新居へ搬入するのがよい。当社なら引越日にあわせて搬入できます。大手企業の転勤サポートを請け負っているので通常より安く提供できます、云々。
またハウスクリーニングについても話を聞いた。家を売る前にプロの手で綺麗にしておきたいと考えていたからだ。これに対し営業氏は「ダスキンとかに頼むよりは安いですよ」という程度の推し具合。これといった特長はないようだった。
ひとまず各々の資料をもらい、その場で即答はしなかった。が、家電についてはどう考えても量販店のバーゲン価格には及ばない。ハウスクリーニングも相見積もりで他社の方が割安と判明した。ということで最終的には頼まなかった。
結局、引越屋に頼むと安いのか高いのか?
世の中の商売は全て「不便の解消」が目的だ、と聞いたことがある。
引越は不便の極みである。「ワンストップで用を足せる」という利便性の提供は商売の王道といえるだろう。
宅配便も含めた物流、すなわち「物を運ぶ」という仕事は、重要度を増す一方で顧客には軽んじられ、価格面で厳しい交渉に晒されていると聞く。
そうした中、「引越のついでに○○」といった付加価値を提供して利益を確保する。こうしたアートのやり方は真っ当な企業努力と言えるのではないか。
一方の消費者は、価格を重視するならば、面倒でも個々に専門業者に当たるべきである。
オーダーカーテンはアート引越センターの直営だが、ハウスクリーニングは外注のようだ。アート引越センター経由で頼めば中間マージンを余計に支払うことになるだろう。
特に単価の高いものについて、「ついでだから引越屋に頼む」のは「手間賃を払って面倒を見てもらう」ということである、という感覚を持っておきたい。
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