家を売る話が動き出す前に転居先が決まった。そこで、まずは引越の準備を始めることにした。
1つ前の記事はこちら。
「開かずの家」、ついに開く
9月下旬の週末、1社目としてアート引越センターの営業担当を家に呼んだ。
――と書くと簡単だが、この日に向けて、かなり頑張って部屋の片付けをやったのである。
「家を売る活動」を始めて1ヶ月以上経つ。しかし赤の他人が家の中へ入ってくるのはこれが初めてだ。
ゴミ屋敷と言われても仕方ない状態の子供部屋も、床だけは何とか片付けた。
妻が見たら卒倒しそうなものもいくつか出てきたが、黙って捨てた。
そして当日、約束どおり、中堅とおぼしき営業担当者がやってきた。
妻は寝たきりに近い状態なので、寝室だけは「開かずの間」ということにした。そしてその他の部屋を一通り見てもらった。
「えっ」というような驚きもなく、営業担当者は粛々と荷物の量をタブレット端末に入力していく。
いや、「えっ」があったことを思い出した。
イケアと粗大ゴミである。
これだけで一杯飲める程度の話になったので、詳細は次の記事に譲る。
芸術的営業
情報が揃ったところで、いよいよ見積額の提示と価格交渉に移る。
当初の見積額は忘れたが、そもそも日通が本命であるから、ふんふんと聞き流す。
しかし、ここからがプロの営業の腕の見せ所である。
日通の見積が明日来ます、という話をしたところで担当者のトーンが一変。一気に営業モードになった。
まず、今回の見積が「本日2社目」でなくてよかった、というところから始まる。
1日に2社、3社と見積を依頼する客が結構いるらしい。ところが、依頼者が1社目の営業担当に押し切られて早々と契約してしまい、2社目、3社目の見積がドタキャンとなる。そういう例が後を絶たないのだという。
表面的には「今日は見積まで進むことができてよかった、ありがとうございます」と言っている。しかしその実、他ならぬこの営業担当者も「客を押し切って早々と契約」を狙っている。空気を読めない私でも分かる程度の「圧」である。
一連の会話の中で、競合である日通が明日来るという情報を入手した営業担当者は、いきなり決めにかかってくる。
「今ここで決めていただければ、さらに安くできますが……」
つまり、他社の見積と比較する隙を与えず、この場で決めろということだ。
毎度思うが、アート引越センターの営業はアートである。
相見積もりを放棄したワケ
相手のペースに乗せられているということは重々承知だ。しかし私はちょっと考えるふりをして、内心は二つ返事でOKした。
理由は3点ある。
1点目は、提示された金額に概ね納得したからだ。
詳しい価格については次の記事で詳述する。
大手にしかできない、梱包材の貸し出し
2点目は、アートには業界大手ならではの良さがあると感じたからだ。
アートに関しては、前の記事で前回の引越に文句を垂れた。一方で、食器などの梱包材に関しては素直に良いと思った。「エコ楽ボックス」というやつで、食器を1枚ずつ保護しなくてもよいのは非常に助かる。一度こうしたツールを利用すると、もはや、食器を1枚ずつプチプチでくるんでダンボールへ――という昔の梱包には戻れない。
実際に利用したことはないが、日通も、仕組みこそ違えど同じようなコンセプトの梱包材を用意していると思う。
今、調べてみたら「食器トランク」というらしい。今回の引越で若干迷惑をかけてしまったので、罪滅ぼしにこちらも紹介する。
ちゃんと調べていないが、こうしたツールは大手引越業者でないと利用できないのではないか。
見積が辛い
そして3点目。これ以上、赤の他人を家に上げることはできないと感じたからだ。
妻は「家族以外が家に入ってくること」が心底苦痛である。それは分かっていたつもりだったが、妻の拒否反応は想像以上だった。
万が一、日通の方が1~2万安かったとしても、来客が1人減ることを優先したい。自室に閉じこもって嵐が過ぎ去るのを待つ妻を見て、そう決断せざるを得なかった。
業界標準(?)の断り方を伝授!
日通には申し訳ないが、お断りの電話をしなければならない事態となった。
そこでまた、アートな営業担当者から的確なアドバイスが来る。
一旦依頼した見積を断る場合、
「引越自体がなくなった」
と言えば角が立たないのだという。
おそらく、これを言われた日通もプロだから「あっ、他社で決まったんだな」と察するだろう。
そうだとしても、表面上「引越がなくなった」と言えば、「当社はもっと安くしますから考え直してもらえませんか」などと食い下がられることはない。
つまり、双方とも余計なエネルギーを使わなくて済む。「嘘も方便」の用例に追加してもよいくらいの、魔法の一言といえるだろう。
後に続く方々、ぜひ参考にしていただきたい。
コメント